僕は昭和二桁東京生まれで関東大震災の様子は父母の話と写真から想像してきただけなのですが、食糧も住まうところもゼロになったそのときから、みなで力を合わせて築いてきた東京の変貌ぶりをまのあたりにして育ちました
僕の家は代々厨子や仏壇制作を得意としてきましたので立派な作品を作る自信を多少はもっているのですが、3.11以来少々考えが変わりました。死者の冥福とか、ご先祖様はもちろんなのですが、昔の日本の家庭にあたりまえにあった八百万のかみさまのようなもの、人の力を超えたなにかを感じさせるこわいものなのになぜかかわいいもの、理屈のわからない子供が、お化けのようにおおきくて決して逆らえないものがあることがあたりまえと思えるような、(怒られるかも知れませんが)楽しくてインテリアアクセサリーとでもいいえるもの、昔どのいえにもあった神棚や張り紙、それがあることがきっかけとなり、ひなまつりや記念日のような暮らしの年中行事になり個を離れて皆で楽しむものごと、そのようななにかが、なにもなかった時代からほとんどのものが揃った現代の家の中にあってほしいと思ったのです
今回の親子展にはそんな思いから生まれたいのりのかたちを出品するつもりです
「龕・かん厨子」
高さ30cm・壁に入る奥行8cm
2011年制作
鎌倉では百八やぐらが有名なように祈りの原点は断崖や洞窟に彫ったと本で読んだことがありますが、日本でも全国にそのようなさまざまないのりのかたちが存在しています
しかし西洋建築でニッチといわれる建築内部の壁を彫り込んだ飾る空間が、日本の家屋内で発達しなかったのは我が国の木造真壁構造が原因でしょうか
そんなことから現代の大壁構造の家やマンションならば、壁の中に本体をいれこむ厨子や仏壇があるのではないかなと試みた作品です
ファサードは数十年の時間を経て輝き出す桑材、日本古来から続いている梁の軸吊り両開きドアに自製銀のつまみ、電気のない時代にろうそくの明かりを反射して内部を明るくする金沢の金箔、これら日本の伝統様式を生かし、前面下にちいさな明かりや、かわいい野の花を飾る棚をつけました。我が家では階段の踊り場に取り付けるつもりです
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「星の厨子」
高さ18cm
桑材欅材の小さな厨子です
だれもがあたりまえだと思いいままで見直すことのなかった清澄な水と空気
生命に関わりの深い澄んだ青空と静寂と夜空の星
それらの永遠を願って子供がお守りにするようなちいさな祈りです
中に入れるものは長年時を共にしたペットの思い出なのかもしれません
