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2009.08.14

指南帳_木工_てり・むくり_大島寛太さんとのメール_

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封筒.gif前田純一様
記録的に遅かった梅雨明けから10日、
和歌山はやっと夏らしい暑さになってきました。
それでも、今年は冷夏の予想も出ているようですね。
田舎暮らしのこと、米つくりをしている友人・知人も多く、
日照時間の不足がやや心配な昨今です。

皆様、お元気でお過ごしですか?

工房のホームページ、ブログなど、いつも興味深く読ませてもらっています。
とくに指南書の記事はどれも永久保存版の内容で、
個人で一から試行錯誤していたなら膨大な時間がかかるであろう技法、工作法、
分厚い経験に裏打ちされたデータなど、
それを公開してしまうところに前田先生の遥かな思想を感じます。
僕にとっては大きな刺激であり、またよき道標。
感謝の念に絶えません。


最近、小鉋を作ったので感謝とともに画像を送ります。
お時間あったら見てみてください。

鉋刃は以前買ったジョイントカッター刃にテーパーをつけて使っています。
内丸と外丸の2丁。Rは100ミリ。

大島_01.jpg
大島_02.jpg


5年前(?)に初めて工房をお訪ねしたときに教えていただいた溝鋸は、
ディスクグラインダーも持っていなかった当時、通っていた技能専のボール盤で加工したものを使っています。
ただ、ボール盤で穴を開けた時のバリが影響しているらしく、挽き溝が片側に寄ることが今回判明。
研ぎなおすか、作り直す必要もはっきりして、峰も、鑢の幅のままなのでR刃口を挽くときに邪魔になってきました。
最近、ご友人と交わされたメール記事のなかで溝鋸の形と理由の説明があり、なるほどと合点しました。

大島_04.jpg
大島_03.jpg


今回は、制作中のデスクの端喰部に、筆返しの要素を取り入れたくてそのために小鉋が必要になってきました。
切れ味は良好で、逆目もよく止まります。時間はかかりますが、削りながら、これでいいのだ。という感触が手から伝わってくる。
自然界で樹木が成長する速度を追い越さない速さでものをつくりたい。理想論ですが、そう思いながら工作を続けています。

残暑厳しい折、ご健康をお祈りしています。

草々

大島 寛太


筆返し0001 1.jpg
筆返し0002 1.jpg


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封筒.gif大島寛太様

メール嬉しく読ませて頂きました
気候不順の信州ですが和歌山の様子を知り全国どこでもお天道様が恋しいですね
松本ではすいかが不作に加え、暑くならないので販売も伸び悩んで困っていると見聞きしています

仕事に精進のご様子、写真とともに拝察しました
しっかり要点を見据えて貴君らしい工夫で道具を作っている姿を想像して嬉しく思います

さて、筆が転がり落ちないようにという機能から生まれた筆返しがキーボードの時代に機能するのかは曖昧です
それでも真剣に木工を目指しているといつか筆返しをやりたくなる
 祖父の時代には筆は実用品で父の時代はそろそろ万年筆、いまやサインペンやボールペンとなりそろそろパソコンモニターとなっても僕もいくつか作りましたし、息子も数年前作っていました

厨子の屋根をやっていて僕は不思議に思います
日本の、とくに屋根の形のルーツは直線的なものだった、それがすぐに曲線のてりとむくりの屋根になり以後の伝統となっている

それはなぜかというと美しいからではないかとおもうのです
そもそも美しい曲線は目的とするかたちと、実現するための技法双方ともに、とびぬけてむずかしい。真剣に仕事をする人間は、いつの時代でも飛び抜けて難しいことに挑戦したくなるものではないでしょうか?
「滅びてもなお美し」が日本の心としても、美しいものは機能を失っても傷んでも、賞賛され修復されて日本の伝統の資産として伝わってきているものだということは古くからの建築をみれば明らかなのですが、なんの役に立たなくても美しいかたちのものとは、ただあるだけでよくまた不可欠な人の心に響く美術や音楽とおなじ芸術なのです

「てり、むくり」は切磋琢磨をくり返して洗練され完成した日本の伝統で、もっともうつくしく制作はむずかしい
仕事は美しい形を理解することとその実現に向けての技法マスターが不可欠です

具体的には

1 自然界にある有機的なカタチがベジェだということを体で覚えること

2 つくりだすかたちにどんなささいな欠点もないこと
    逆目、むら、よどみ、ためらい、贅肉、手あか、不用意に付けた傷などはもってのほかです

3 品位、品格、気品を身につけること
てりとむくりは装飾ですから形が勝負
媚び、てらい、計算があると下品で、美しくなければむしろないほうがいいものです

いずれもそうとう大変ですが、それゆえ挑戦したくなるのは貴君に志が備わっているからと感じます。しかし自分の手から美しいものが生まれ出たときの感動は飛び抜けていて子供を生み出せない我ら男性が、いのちを備えた美しいてりとむくりを創造するよろこびは別格です

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◯道具について

溝鑢の工夫がなかなかいいです
手持ちの道具で実現可能な機能をよく理解している
なにかがたりなくて一生懸命工夫していると思わぬ創造につながるもの、僕もたびたび経験していてハングリーだからあり得ることですね

伝統にはなかった刃底が丸いのが斬新で、鋸屑はここで回転するので詰まることがなく、10おきぐらいに大きい丸が昔のオガのようで、なお固まった鋸屑の排出をうながしている
これからの溝鋸はこの作り方がいいと思いますが、僕にはない発想が愉快ゆかい、まさに教えるは教わるです
削ろう会の酒井さんが先日溝鋸をみて、これは知らなかったと感動していましたので、鉋作りの好きな人は真似をしてくれるといいですね
これからの職人はノウハウをどんどん提供し合いながら制作に生かすことが大事です

鉋について、
台尻が少し長いなと思いましたが刃を振るための押し溝の遊びがきちんととれているのをみると、外丸、内丸も上出来でありましょうと想像できます。今後の一生道具になりそうですね
台下端の曲面だしが大切ですが、どのようにしていますか?

◯作品について

室内で使うものでは端喰は板巾に限界があります
樹種によりますが30cm以上は動くことを前提に木端に将来生じる段差を考え、つらいち、に仕上げても無意味だとすることが肝要です

PS
筆返しのてりと、甲面平面との境い目のよどみを削り取り去ることが肝要です
木目方向が交差していて平面から曲面につながる部分の仕上げは大変難しく、漆仕上げなどで艶があがるほど逆目や凹凸の欠点が現れてきますが、このような部分には僕は 「際鉋_三八ねかせ」 を使います
この鉋は木目にたいして直角に削る際の木の傷みを最小限にしながら、件の境目に次の仕事のガイドラインを作ることができます
近々詳細をブログにアップしますので作るときの参考にして下さい

それでは気候不順のおりお元気で、いつか時間が出来たら奥様とお出かけ下さい



090815_02.jpg



「桑材厨子屋根の仕上」2008年


090815_01.jpg



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