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指南帳_金工

2009.01.15

自分の椅子_弟子達_早川久美子君

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「090112_Tチェアー前脚の曲げ角度の微調整」


自分の椅子が作れなくて人様の椅子が作れるわけないだろ〜・・
いずれにしても木工の道の覚悟を決めるにあたり腰を据えてとりかかるための椅子がいる、は回り道でないと昔僕が自分に課したことで、弟子達にも伝える

正月休みそのことを考えていたらしい早川がこんなことを言ってきた
いい椅子作りにも、仕事への愛、片時も頭を離れない熱意と情熱が必要なのだ

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自分の椅子を作りなさい。

「自分の椅子」とは、仕事するため椅子のこと。

 

聞けば、先生が修行時代、

20代の頃に二代目である大先生と専門の材木屋さんに買いに行かれた逸品だそうで。

嬉しいより先に恐縮してしまう年代もの。

当日、工房の帰りは、大事にお腹に抱えて歩きました。

桐材は、バルサの次に柔らかい広葉樹だそうで、

直接ネジや釘を打てず、また椅子にはほとんどしない木とのことです。

・・・そういえば、見たことありません。

 

先生の椅子は、何度か座らせていただいたことがあります。

キャスター付きの製図椅子の脚を利用し、

漆で仕上げたその年季の入ったその椅子は、

聞いて驚きました2×材を矧いで作られたそうです。

「美しい」とは何なのか、ますます考えさせられます。

 

その日の夜から、

脚に使うキャスター付きの椅子のインターネット検索が始まりました。

条件は、

自分の低い身長に合うもの、

一生共に過ごすには樹脂より金属、

壊れにくい、壊れても直せるようにシンプルな構造、

であることです。

 

実家に帰省中の本日、とうとう港北にあるIKEAで条件に合った脚を購入しました!

(都合いいことに、座面と脚が別売りでした。)

 

脚が決まり、ますます緊張が高まります。



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「090112_Tチェアー背もたれ端部錆鉄に真鍮蝋流し飾り工程」


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朝礼での先生のお話しのなかで、

希望を持つことの大切さを教えていただきました。

できるようになりたい。と思わなければ、できるようになりえない。

 

この朝礼のあと、

数年前、学生の頃、アメリカに短期留学をした友人がすいぶんのショックを受けて、

帰国後にくれた手紙に、こういったことが書いてあったのを思い出しました。

『I want to 〜がなければ、誰も相手にしてくれなかった。厳しかった。』と。

 

 いつもはお休みをいただいている土曜日、

大作さんが鉄の溶接を教えてくださるということになり、工房に向かいました。

溶接が上手くなりたい、と思い続けているなかでの手番。

その前日にも、ちょうど先生の椅子の溶接をずいぶんと見せていただく機会があり、

なんとも充実の2日間を過ごさせていただきました。

 

もう一つ嬉しいことは、お正月休みから続いている自分の作業椅子づくりに、

先生が新たに挽き物の丸い板をくださったことです。

椅子をつくりたい、と頭をぐるぐるさせ、やっと見つけたキャスターの脚に、

これから古い虫孔のあるすばらしい栗材の座面が付きます。

 

木工で生きていくのは、ものすごく厳しいと伺っているし、肌で感じてもいます。

でも、これから常に自分がどうしたいのか、どうなりたいのか、

希望を持つことで、どれほどすばらしいお仕事になり得るのか。

心構えができたお仕事はじめでした。

 

 先生にいただいたお年玉、大工道具の柄の手ぬぐい。

ありがとうございました。

さっそく自宅の部屋に飾り、気合いを入れました。

驚くことに、買われた色んな柄の中から、

一番先生がお気に入りのを私が引き当てたとのこと!


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「気合い_090113_早川自宅壁」


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「誕生」_090114新作桐と栗の椅子のための渦巻き


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「庭の椅子」_081015秋の思索


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「早川」_090115 初めての鍛造_渦巻の芽生え


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ありがとう、いいことを思ったね


アンテナをたてていた君だからIKEAを手に入れることができ、求めていた新しい自分を発見する

希望や夢を持つ人に周りはなにかをしてあげたくなり椅子は現実に近づき、君には今まで知らなかった自分がみえてくる

自分対象の椅子をデザインするとは自分の個性を育てることで、道筋は自然の縁といった楽しいものらしいが、求めていない人にはあるわけないね

正しい人にとっての喜びは、してもらうことよりして上げることの方が大きいはずだけれど、その友人は何を求めて留学したのだろう・・


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樹は神様が作って、木工家が加工し、使う人の過ごす時間が最終仕上げする(木工芸と呼ぶ)

君はこれから一生掛けてあの椅子を作るのだけれど、同時に君はあの椅子に作られるのだから、ないがしろには決して出来ない

素敵な椅子で過ごす時間が素敵な君をつくるから鷹揚な樹は喜び、椅子と君は外部に美という感動を呼んで本当の三方佳しとなる

適当なときに壊れたり飽きられたりして買い換えられことが利益につながると、樹を勿体なく使い捨ててきたから、近代の経済発展は人間だけが喜び、樹と地球はちっとも嬉しくなかったことが多くの現代木工の間違いだった

道具の使い手が、道具とともに自分の歴史を刻むことが出来なくなってしまったんだね

それで君が何をしたいは、まず樹に何をしてあげたいかなのだよ


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それにしても大工道具よく当てたね

例えば送ってくれた写真、

君の感動は僕個人にはよく伝わりうれしいが、見る人が建具屋さんだったら手拭いは目に入らない

壁職人だったらこの色を好きだと壁だけを見るから、写真は他人に君の心を伝えることが出来ない

見ると観るの違いはこれなのだけれど、wont toと同じことが言えて他人である社会を相手にするのはとても難しい


しかしそんなことより、今の君は樹と自分を大切にすることから始まる

それから技術錬磨は人間らしい仕事に不可欠で、溶接金工は木工に可能性という夢を拡げてくれる

なんでも初めはむづかしく思えるが継続すればそのうち「わかった」っと感動する時が必ず来る

これは才能ではなく好奇心に基づく精神力で、僕のようなひ弱な体力などは凌ぐものなのだよ


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ch_仕事椅子_J_2007


2008.12.01

works_テーブルウエアー_ランチョントレイ

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「鍛造アルミのランチョントレイ」
2006年庭_夏_いずみのほとり_dogs_蘭たちと


仕事の意味を考えていた頃ロールスロイスに乗せて頂くことがあり、手仕事の美しさと現代のクルマの味気なさを感じながら銀色のボディをなでなでし、綺麗と美しいの違いに気づき僕は感動した。

この作品は平安時代の経筥がモチーフとなっています。
ランチョンマットでもあり、重ねることの出来る運び盆でもあり、まわりに紅葉を飾ったりして食器としても楽しまれています。2000年の娘の結婚式のおりに試作以来我が家の食卓には欠かせないアイテムとなりましたが、現在は弟子の教材となり、おかげさまで商品となり方々で喜んでいただいています。 


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「金銅法華経経筥」国宝・平安時代

このころ真っ平らな板というものは無かった。人の手が生んだ生命感に溢れる美しさは、文明が発達した現代人が失ってしまった数多くを物語っている。

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「工程1_叩き初めの写真」

綺麗なたいらに傷を付けるのは勇気がいります

まったいらはまるでつまらない
優れた建築の天井のようにランチョントレイは「むくり」をつけますが、機械生産にはありえないことで、手仕事は機械に出来ないことをするといい。
むくりをなぜつけるのかと問われれば、なんとなくいいのだとしか答えられないところが面白いのです




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「工程2_隅丸」

素材厚2mmですが、軽く薄くすれば木は割れてしまうし洗えない。それで僕はときどき金工作家になりこれは木工品ではないと笑われます。・汗。 コバのかたちは、蛤の貝殻のコバが美しいことから「蛤刃」と呼ばれる日本の伝統のかたちになっていて、床の間の「敷板」という木工藝品になっています。
 アルミは比較的新しい金属で、時間が経たないとたたいたものがどうなるのか解らないので手を出す人は今のところあまりいません。(真鍮は数年するとひびが入って割れてしまうことがあるそうです)

この作品は荒っぽく洗えて時間と共に骨董の味わいになる、熱いポットなどOK、スタッキングして収納できる、作り手の個性が反映されることを特徴としていますが、錆びることなくいつまでも渋く輝いていてなんともいいのです


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「工程3_持ち手の叩き出し」
鎚を目的の丸みに成形する

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技法はそれほどむづかしくありませんが、簡単に平らな板が手に入り、何のために叩くのかわかりづらく、ベジェ曲線でしか設計図が描けない蛤刃の美しい形は難解です
きずがついて「綺麗」は失われてしまうものですが、ほんとうの美しさは傷が付いても失われないもの、耐蝕アルミ合金の軽さは反面きづがつきやすいといった欠点をもっていますので、制作には「美しい傷」を知るセンスが必要です。
 今冬もさまざまな動物たちの足跡が雪を飾るのですが、人は足跡を飾るために雪の上を歩いてしまう。それがなによりこの作品の難しさとなっています



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「みなとみらいでお正月」2005年

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「家栄」2008年
小椋君の会社引き継ぎに際して

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僕は運悪くロールスロイスに出会ってしまい貧乏をしているのですが
それでも動物のような美しい足跡を作品に刻んでみたいのです


鍛造アルミのコースター01.jpg

















2008.11.29

指南帳_CAD_3D図形_柱状体・フィレット・テクスチャー

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『直方体に角丸と糸面を取り、鍛造アルミのテクスチャーを設定する』


鍛造アルミ.jpg






















「鍛造アルミのプレート」2008年


作品をデザインする場合、実物のイメージを確認したい時があります。

僕の場合 VectorWorks(105JD)でレンダリングし、設計に役立てています。



以下VectorWorks105J上での作業です
【注】事前に実物を撮影したイメージデータを準備して
リソースプラウザに登録しておきます

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3 柱状体にします
奥行きはこの場合厚みになります。0 に3と入力します







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4 右斜め上に視点を変えます
5 3Dフィレットツールで角丸の設定をします




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6 薄い形状の場合で、四隅の稜線を選択しづらい場合は
データパレットで厚みを大きく入力し実行後、元に戻します

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7 角丸をとった状態です


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8 面取りを設定します


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9 面取りの終わった図形です


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10 レンダリング画面です


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11 鍛造アルミのテクスチャーを設定します
【注】リソースプラウザには今後シンボルなどさまざまなデータが増えます
共有リソースファイルを登録して以後の設計作業に役立てます


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12 テクスチャーの編集をします


di11.jpg

13 レンダリングイメージです

注1】
工芸では角丸を隅丸と言い、実際の形は数値で表せないベジェ形状になりますが、煩雑を避けるため3D図形制作の概念として説明しています

注2】
隅丸と面取りはデザインの重要要素です。レンダリングイメージを確認しながら大きさを変化して比較検討して最終決定します





2008.11.14

加飾_鍛造アルミへの叩き込み(はめこみ)象嵌(ぞうがん)

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指南帳_金工_叩き込み象嵌13.jpg
「鍛造アルミ 真鍮の飾りの付いた硯台」
「楓材摺漆仕上蓋の丸硯」 「筋鑢文様金箔仕上筆置」

器体に装飾することを「加飾」と呼びます。
よい器体によくできた加飾が施された実用品は、品格や美を備えた工芸品です。


象嵌とは器体に異素材を嵌め込み装飾とする技法で、木工にもあります。ギターのフレットには貝の象嵌が目印になっていて伝統的な装飾になっています。

「叩き込み」は、正式な呼び名ではないかも知れませんが、嵌め込む金属を叩いて延ばし、簡単にははずれないようにテーパー加工した器体の木口(穴の切り口)に押し込む技法で、伝統的な布目象嵌模様もよく観察すると同じ原理を応用しています。

加飾には、張り付けた模様もありますが、叩き込みは乱暴に扱っても強靱で、無垢素材は表面を削り取ってメンテナンスをしても再び装飾が現れます。

しかしそればかりではなく、使われた時間が野ざらしの石仏のような美を作品に加味し、日本人の侘びさびを良しとした感性、骨董の美はこのことをいうのかと思われます



指南帳_金工_叩き込み象嵌18.jpgかしめる原理の説明


鑢(やすり)による削り合わせ、槌を正確に打つ勘。象嵌のかたち、大きさ、余白、触覚など人の優れた感性が要求されるこの仕事は、失敗すると物理的な機能を持たない無意味で野暮なかざりとなります



指南帳_金工_叩き込み象嵌05 1.jpg

「工程説明」

指南帳_金工_叩き込み象嵌02.jpg指南帳_金工_叩き込み象嵌07.jpg指南帳_金工_叩き込み象嵌09.jpg

指南帳_金工_叩き込み象嵌03.jpg

「使用する鎚」


指南帳_金工_叩き込み象嵌17.jpg

銅を嵌込み、古美を硫黄(ムトウハップ)でつけますが、

錆びない金属と錆びる金属の特性を生かし、自然をデザインにしたものです


指南帳_金工_叩き込み象嵌14.jpg象嵌材には金、銀、真鍮、銅など伸びやすい金属を使います



works_文房具_鍛造アルミと紫檀のペンボックス07.jpg

「嵌込象嵌の蓋のペンボックス・2005年」



指南帳_金工_叩き込み象嵌15.jpg指南帳_金工_叩き込み象嵌16.jpg

「脚部のかしめ部分」


溶銀仕上の真鍮球で脚部を制作し、かしめた脚部

(かしめ技法はからくりとも呼んで、同じ原理を利用しています)



水に強くて汚れたら洗えること、熱に強いこと、伸びること、曲がること、叩くと素材特性が変化することは木にはない金属の特性です。
この作品はそのような特性いかして、盆栽の台、テーブルセンター、コーヒーポットの台、土瓶しき、鍋敷、趣味の煙草パイプの台など様々に使われていますが、素材の特質を生かすことができると、機能に付随した用途が広がってさまざまなデザインソースが生まれてくるのです。

子供の仕事や素人の仕事には、はっとさせられる美を備えたものがあって感動しますが「よくできた・・」とは、経験値に基づいた確かな技術と、時間の審査に叶うことのできる美、その双方を備えているもの・・といった意味あいです

指南帳_金工_叩き込み象嵌12.jpg



美しいものは「そこにある」だけでいい。

そのような心理機能が作品に備わっていることが工芸品とよばれる所以で、貧乏を愉しみに変えてしまう特技を持ち合わせることが出来る人の手と、長持ちするものをつくりたい良心の働きによって生まれたものは、人の心に働きかけるもの、絵画や彫刻と同じ存在となります。


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