home > blog > 前田純一 blog > 指物師の道具箱1_鉋 小鉋 豆鉋

指物師の道具箱1_鉋 小鉋 豆鉋

2009.08.30

指南帳_鉋の仕立て_其の二_下端調整

(0)  (0)

09083002.jpg
「杉薄板材の膳」2009年

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
09083001.jpg
2009川上三恵子記


09083003.jpg台頭部の下端は刃を仕込むとふくらみますので
その部分の削りに使うとされている台直し鉋というのはタテハとも呼んで刃が直角に仕込むことで刃先角が大きく(85度)刃が欠けにくいので外で仕事をする大工職人が下端調整に使うのでこう呼ばれるようになったのではないかと思います。僕は95度仕込みの刃巾4cmほどの小鉋で鉋くず2、3枚分すきますが、削り終わりがガタついてみだれる場合は大抵この部分の削りすぎです
またこの鉋は逆目の起きやすい唐木や刃の尽きやすいチークなども削ります





下端を平らにするのにまっすぐな下端定木を使いますが、実際は冒頭写真のように重みで板が垂れることもあり一概にまっすぐがよいとはいえません
削る相手の木に鉋を軽く当てたとき、下端の刃のすぐ下を中心に鉋が回るように調整します


09083004.jpg
「弟子達_2009年春」

2009.08.30

指南帳_鉋の仕立て_其の一_刃のはめ合い

(0)  (0)

寸六仕立て02.jpg
普通に売られている鉋は二枚刃仕込み角38度、刃の大きさに寸六、寸八(刃巾65ミリから70ミリぐらい)があり、長台と呼ぶ長いものがあります
特徴は二枚の刃と台が微妙なバランスで協力して仕事をすることで、刃の重要性と、それ以上に台の仕立てと調整がものをいう鎌倉室町から現代まで原理の変わらない日本の代表的な手工具。
部品数4個の単純な構造ですが使いこなしはむずかしく、人により仕上がりに雲泥の差があるところに手仕事の面白さがあります

お客がなくなって閉店しそうな刃物屋で長い間眠っていた白樫、東急ハンズなど空調の効いた店内で数年在庫してあったもの、もっともいいのは師匠がこれを使え、と頂いた何十年も使ってこなれた古女房のような「おふる」で、現代器機にないカネで手に入らない価値が魅力、弟子にも使わせませんし使わしたところで使えこなせない一生の相棒です(僕の本物志向は鉋が原点かも知れません・笑)


寸六仕立て01.jpg

手打ち刃しかなかった昔は、名の通った店がすすめるものを師匠が刃をたたいた音を聞いたりしながら選んで手に入れてくれたものですが、手作りのものは当たりはずれがあったので刃物選びは難しく、切れないものを買うと騙されたなどと自分の目を反省したものでしたが、それでも何年か使っているとすごくよく切れだすものがあったりして面白いものでした

現在作られている手打ち以外の刃物は規格で作られたヤスキハガネやハイス鋼など機械的に管理されていて面白みが無いかわりどれでも同じように切れるので購入の心配はそれほどありませんし、値段がいいといって切れるというものでもありません
反面台は多少のあたりはずれがありますので、買うときには特に押し溝付近の割れによく注意しますが、乾燥しているという意味では動いたものがよいと言えます

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

寸六仕立て05.jpg
鉋を手にいれたら刃を抜いて乾燥します。乾燥室で三ヶ月以上が理想で新しい台は巾が2、3ミリ程も狭くなったり捻れます。また仕立てた後も木が動きますので落ち着くまで何度も調整するものです

乾燥後、仕立てやすいように押し棒を抜き、以下の手順で作業します(川上三恵子さんがとってくれた作業メモです)
注・僕は刃先線をかまぼこアール状に研ぎ、台上で押し溝に2.3ミリ遊びを作り刃を振ることで刃の出る部分を左右に動かせるようにしています






090830001.jpg



寸六仕立て04.jpg
青色斜線部分で刃を抑え、表なじみを削りますが割れやすい【注】部分には刃が当たらないように注意します。何回か抜き差ししながら刃を仕込みますが、刃を抜くとき台頭木口やや上を叩くように気をつけます
嵌めあい強さは刃を手のひらで強く押し込み、刃先が下端に3〜5ミリほど届かない程度、その後玄翁で正しい位置まで叩いたあと、裏刃をやはり刃先から3ミリ程度で止まる位置の程度にしますが、裏刃の嵌め合い度合いは曲げてある耳のねじれを確認しながら金敷の上で叩いて調整します


090830041.jpg

左上・逆目に注意して裏刃の巾を合わします
            右下・左右に動けるよう裏刃上に2ミリほどの遊びを作ります

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

押し棒の長さを切り、戻してから動かないようにエポキシや麦漆(小麦粉と漆を練ったもの)などで穴を埋めます

090830043.jpg


表馴染みを削りすぎたり、時間が経って刃がゆるくなった時には、ハガキなどをボンドで張り付けます


090830045.jpg
下端以外を仕上げてに2.3回摺漆をします



・・・・・・・・・・・・・・・・・・090830 570px

2009.08.14

指物師の道具箱_小鉋_際鉋(きわがんな)_三八ネカセ詳細

(0)  (0)

09081402.jpg

一枚刃構造、木目にたいし直角に削る際に使う鉋です
大きさ三種 大、中、豆、のうちの中になります

指物一般小鉋の仕込み勾配53度にたいして38度弱にねかせ、75度に仕込みます
刃先角33度+逃げ角5度=仕込み勾配38を保ちます


・・・・・・・・・・・・・・・・・・
09081403.jpg
鉋台 厚み2.5cm、巾3.3cm、長さ15.5cm

【注】
この鉋台の材料、赤樫は白樫ほどねばりがありません。刃を仕込む際には
台頭が下方向へ大きく開きますので何回かに分けて作業し、割れないよう気をつけます(下写真参照・台頭が2ミリほど下がります)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
09081404.jpg
刃の仕込み角38度・振り角度75度
09081405.jpg
09081406.jpg
刃巾25ミリ・長さ65ミリ程度・刃の先端部厚み3ミリ弱・振り角度75度


小鉋キワ.jpg
小鉋キワ1.jpg

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【注】木工の仕事に役立てる以外の無断転載をご遠慮下さい

商業用などに使用される場合はご連絡下さい

前田木芸工房 前田木藝工房 松本市美ヶ原三城 江戸指物師 前田純一 厨子仏壇制作販売 まえだもくげいこうぼう


2009.07.22

指物師の道具箱_際(きわ)鉋_三八ネカセ一覧

(0)  (0)

09072201.jpg

「厨子屋根・隅垂木部の木欠(きがき)仕上」

左右方向の刃の出を調整するために小さな釘シメを使います


・・・・・・・・・・・・・・・・・・
きわ鉋_標準勾配03.jpg

「斜め仕込み(上図)とかね仕込み(下図)」

際(きわ)鉋は木欠き段部の入りスミ部分を削る工程に使いますが、標準勾配(仕込み角38度)の豆きわ鉋は、木口などの木目に対して直角部分を仕上げるために逆目がないことから一般の二枚刃に対して一枚刃です

仕込み勾配53度の立て刃に対し、ネカセ刃と呼んでいる斜め仕込みは、刃の下端方向と立上がり方向へ刃の出る量が連動して微調整がきかないことから、豆きわ鉋はかね仕込みに制作します。また鉋くずの排出口は写真下の形に作ります
きわ鉋_標準勾配04.jpg

「鉋くずの排出口」

写真上は赤樫材の鉋台、HSS鋼の刃を使用した1997年製
下は修行中に毛引きの刃で制作したもので上方向に排出できるよう工夫した。しかし作業中手が痛いのでこの方式は廃止した


・・・・・・・・・・・・・・・・・・



09072301.jpg


家具用のきわ鉋と指物用きわ鉋(8・9・10)

5は二枚刃きわ鉋下端角が摩耗しないように黒檀を埋め込み、家具の入り隅部分の仕上げに使っています


きわ鉋_標準勾配01.jpg

【注】木工の仕事に役立てる以外の無断転載をご遠慮下さい

商業用などに使用される場合はご連絡下さい

前田木芸工房 前田木藝工房 松本市美ヶ原三城 江戸指物師 前田純一 厨子仏壇制作販売 まえだもくげいこうぼう


2009.07.07

指南帳_鉋_豆平鉋の制作_鑢から作る溝鋸の制作_其の九

(0)  (0)

坂本富士夫作溝鑢 - 1.jpg
封筒.gif

さて夕刻鑢が無事到着しました

今度は刃先線も一直線に揃いよく切れます。これでは小生出番がありません

偶然なのかともおもいましたが親指と人差し指で掴む当たりがうっすらとくびれて、金属の冷たさを感じさせない昔の包丁のやさしい感覚でうれしくなりました。労苦をいとわず手に豆が出来るほどの時間がゆかしい鍛造の痕跡で、切るための条件、上目がひとつひとつのスミまでキチンとよく立ってなんと美しいのでしょう

(それにしても目がよく利きますね・老眼でしょうに若い頃からの鍛えが目に浮かびます)

そういえば日本では鉄のことをくろがねと呼んでいました。砥石で研ぐと白く光りますがやはり黒光りが奥ゆかしい。鋼の持つ野武士のような強さとやわらかな曲線が無理なく同居していてこれは貴金属にはない手仕事の刃物ならではと感動です。


【備考】茶釜や火皿のメンテナンスに残り茶を使って趣のあるくろぐろとした味を出すのは、鉄分と茶葉に含まれるタンニンの化合を利用した日本の伝統技法

【注】日本の鋸は引き切り(引いたとき切れる刃の作り方)ですがこの鋸は押し切りで西洋の鋸と同じです。日本の昔の大八車や荷車は引いて運び、現在の庭仕事用一輪車は押して運ぶ違いと似て興味深いですが、この溝鋸は鑿が何百も連なっているような構造が特徴です

いい道具がなければいい道具を作れませんがこれは僕達の暮らしも同じくでしょう・笑。 鉋台の制作は押し溝が要ですから、僕の目にはすぐそこに調子のいい貴兄の鉋が見えています。この溝鋸を使って愛用小鉋が出来、それを使って歯車が出来れば昔の水車のようななつかしいイメージ、夢に一歩近づきましたね



坂本富士夫作溝鑢 - 2.jpg

「坂本富士夫作溝鑢」2009年7月

スミつけをどのようになさったか不明です


坂本富士夫作溝鑢 - 5.jpg

坂本富士夫作溝鑢 - 7.jpg

「坂本氏設計鋸刃角」

切り込み角80度・上目角60度」


坂本富士夫作溝鑢 - 6.jpg

鋸道方向を曲げるために鋼厚3.3に対し、峰部分厚みを2.5にしてあります
また木目に対し逆目のない角度切り専用なので裏刃(脇刃角)は不要です
これにより目振りやあさりだしも不要となりキチッとして滑らかな切り口が得られます



ペン.gif

さぞ大変でしたでしょうが、完成ほんとうにおめでとうございます

現代の一般的な鋸はレーザーでカットして機械目立ての替え刃式が主流となりつつあります。僕がカッターナイフをめったに使わないのは研ぎの楽しさに加え、型紙の切り抜きや革の裁断などに必要な特殊技術のためなのですが、このままいけば持っているだけでもうれしくなるような美しい道具は将来なくなるかもしれません。しかし良く考えてみれば一生替え刃を買い続けることに比べれば手打ち刃物は安価なものです。機能に加えて見た目や持った感触に加えてそのものが醸し出す雰囲気が、言葉に喩えようもなくすてきなことを美しいと表現するのでしょう。これは工芸品といわれる所以で伝統となる絶対条件でもありますね

三城は今日は一日雨になりました。そちらではもうあじさいの季節なのですね



・・・・・・・・・・・・・・・・・・


返信.gif

前田純一様

 

素敵な課題のお仕事で!興奮し夢中に成られておいでで!羨ましい限りです!昔の人の仕事は現代では計り知れない部分が沢山隠されているように思います!

昔からある道具だとか仕事だとか、その様な仕事をしている人達の生活人柄!お話をお聞きしているだけで現代のむなしい社会の矛盾から解き放たれる事が幸せな時間と時々ご迷惑をお掛けしながら過去の偉大さをかみ締めている次第です!

確かに昔は定規も数式も無かったのでしょうが!モット人間が持っていた共通の言葉"感覚"の様なものがお互いの心のどこかに在って!何かを作り出すと其の共通の言葉が自然とお互いの仕事の基準に成って、素敵な三次元の世界を作り上げてきたのではないでしょうか!?

今回の焼きいれも!センサーと言う機械ではなく!人間の持っている色の感覚で基準を作るとセンサーが無くても!数字が無くてもお互いが理解できる数値以上の正確さで!其の事が伝わるのではないかと考えております!

キャノンがまだコンピュータをやり始めた頃!キャノンの技術者が尋ねてきまして!ベジェ曲線なるものをアップルPCで良く話し合ったのですが!小生はその曲線に磁石を当ててより自分の感覚に近い曲線が欲しいのだと!数式でいじるのではなく感覚""で感じる曲線が欲しいのだと!其れも複雑な操作ではなく簡単な方法で!と言っていましたらキャノンはPCから撤退!でも小生が三十数年前提案した事が沢山実現しておりますが!複雑すぎて理解しがたい事が多い世の中になってきました!長くなりましたお許し下さい・・・・・・・・・・・・

 

屋根裏から昔の玉手箱が出て参りまして!受賞作品のカンから出てきましたので送信いたします「私・二十七頃の作品」

其の当時と致しましては革新的なデザインでした"表と裏の顔が違う"自慢話になってしまいましたがお許し下さい!

左右一対切り出し!頑張って作ってみます!

 

坂本富士夫受章作品.jpg

「坂本富士夫受賞作品」


貴重な写真をありがとうございます

メタリックな感じがいかにも新しい時代の幕開けを彷彿とさせているようです

僕も見た覚えがあるなつかしい感じで当時を思い浮かべながら、あれほどまでに憧れだったクルマというものが都心では役に立たなくなってしまった現在を考えると隔世の感ですが、時代に合った本当によいお仕事をされましたこと、僕まで懐かしい思いです。それにしてもよい仕事とは色あせないものですね

貴兄の作品からは暖かな人間くささや仕事を楽しんでいる心情があふれ、またアップルやキャノンのお話でのベジェ曲線は興味深く、図面で書くことが出来てもそのまま具現化したものはきれいすぎて機械的で面白くない、つまり美しいものとの差異なんでしょうがやはり人生一度きり、アナログ感覚人間でありたいですね


やまあじさい2009.jpg

「やまあじさい・2009年6月の庭で」


«  前へ   1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6  |  7   


PAGE TOP