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指物師の道具箱1_鉋 小鉋 豆鉋

2008.12.07

指南帳_鉋_小鉋_40内面取り

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木の建具の「面腰」にみられる内面とり(うちめんとり)は日本の伝統で、古い家のすみずみまで細かい神経のゆきとどいた仕事は清々しいものですが、他にも「塵落とし」など、ほこりのたまらないデザインの細やかな感性は、機能優先で普及してきた現在のサッシにも特に和風建築には取り入れて欲しいデザイン要素だと町を歩いて思います


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家具調度の細部には「大面取り」があり、組みあげた後での入りスミ加工はなかなか厄介な仕事となりますが、この鉋は45°の交差角度が60°になることに着目して内ズミを要領よくキリっと仕上げるために工夫した刃巾40mmの二枚刃(ハイス鋼)で、持ち変えることなく平鉋、60°のきわ鉋左右の三役をこなします




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外面取り時に鉋台がすり減るのを防ぐため下の写真のように金属を埋め込み、押し溝の下端部分を工夫して一般の鉋では削れない刃の端部で交差部を仕上げます。
真鍮と銅の両方を使ってみましたが、銅は滑りが悪く、以後弟子の鉋は真鍮に統一しています。



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「鉋台押し溝下端 1」
鉋は中、鑿は隅を切るといい、鉋は隅を削れないのですが、
鉋刃の耳をとらずに、端部から出る鉋くずの排出口をこのように作ります

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「鉋台押し溝下端 2」
赤樫はねばりがなく、割れてしまいましたので白樫を薦めています



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「M邸コレクションケース細部の仕上」
トリマーで機械加工(上)後、この鉋で仕上げます



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近代の木工は人の手が生みだしていた仕事を完全を目指した機械に置き換えながら、大部分で人間の技を追い越しましたが、回転運動の宿命を持つトリマーでは加工出来ないこのようなディテールを手と勘で細工するのは楽しいものです。
量産品のなかには伝統からはずれた感覚のものも見かけますが、機械の出来る仕事を前提にデザインすると近代工場は人が機械に使われる主客転倒となります。日本人らしい感性を備えた、例えばこの鉋だけにしかできない仕事の歓びを知ることは手仕事には重要で、伝統をふまえた目的に向かう独自の工夫と道具の使いこなしの結果が、画一性のないやや不完全な形になることが面白いのです


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2008.11.15

指南帳_鉋_四方内反小鉋の制作

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「ハイス鋼を使った赤樫の四方内反小鉋・小」
「青砥とチーク材の仕上げ用砥石」
1985年制作


自然に学んだかたちは、人のからだに馴染んでいつまでも疲れない
椅子は二次放物線を構成した三次元曲面を木から削り出します
よい生活によい道具が必要なように
椅子の制作にはよくできた鉋が必要です



「放物線」というのは 空間に物を放った時の軌跡で、日本では日本刀や神社仏閣の屋根の形です。よくできた工芸品のかたちは放物線の組み合わせで成り立っていますが、茶道に使われる棗(なつめ・茶入れ)に理解しやすい形でよく表れています。
日本で「てり」と呼ばれるこの形状の美しさは世界的にも認識されて、フランスでルノーのボディデザイン時に、ベジェという数学者が初めて理論づけしたことから「ベジェ曲線」と呼ばれています。作品はこの要素が備わった形に仕上げていきます。


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「手描きのサークルチェアー木端木口断面図」 2000年1月


椅子の木端木口は座面を掴んで位置を変えるときに手にやさしいことがポイントす。
図面に基づいて型を作り、座板を削り出してみると、かまぼこ型断面を直線状に削る内丸鉋では美しい形にはなかなかならない。
それでサークルチェアーの制作中に考えたこの鉋は、以来手放せない道具となっています。
弟子達がまとめてくれたこの鉋の制作資料は工房の教科書ですが、同じ志を持つ後輩達に紹介します


小鉋_四方内反り 指南帳_鉋_小鉋_制作_ - 23.jpg

「仕事場で」2008年10月
今年入房の弟子達・早川久美子君と飛世将利君
作品制作のための道具づくりをしています

小鉋_四方内反り 指南帳_鉋_小鉋_制作_ - 22.jpg
「仕事場で」
アール定規を作り、鉋台へ曲線の墨つけをしています

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「製作工程」

1 前出、豆平鉋から制作するので以降の鉋台制作工程です

2 点で材料に接する鉋は刃口に真鍮をはめ込みます
  真鍮板のいたどりから台への合わせ工程と鉋台下端の成形工程です

3 曲面鉋の刃の研ぎに使う砥石の制作と刃の研ぎ工程です


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小鉋_四方内反小鉋05.jpg


「曲線の変化概念図」

鉋の角度を変化させることにより
A-A'、B-B'の曲線を滑らかに繋げます

木の導管に対し無理のない角度で削ることが可能になり
ささくれず、削り肌に生命感が溢れてきます


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「ハイス鋼を使った赤樫の四方内反小鉋・大」


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ベジェ曲線とよばれるようになった自然科学のラインは、美しい日本のひらがなのフォントなどにも利用されているそうですが、僕達の仕事ではCADと呼ばれるコンピューターを使ったドローイングが現代の手法となっていて、円、直線、楕円、渦巻の組あわせでは描画できないラインはベジェ曲線を入力して描画します。僕の場合は ShadeとVectorWorks というソフトウエアーを使います以下はコンピューターを使った図面です

works_設計製図 sk_works_ch_サークルチェア_.jpg
「サークルチェアー座板」
椅子座板などの有機的な形状はShadeでベジェ曲線を描いて、立体化します
030902ch_circle三面図.jpg
「サークルチェアー三面図」
Shadeを使って描いた部材をdfxファイル経由でVectorWorksへ取り込み、
数値移動、回転、鏡面複製、整列を使って、位置関係を決定します


座板.jpg
「杉材の手前椅子座板(Shade上でのレンダリングイメージ)」
ベジェラインで構成した立体をビットマッッピングして写真にします

2008.10.25

指南帳_鉋_1_豆平鉋の制作_Hi Speed Steel鋼

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木の仕上げはペーパー(サンドペーパー)仕上げが近年は当たり前になっている。(それ以前は、木賊、椋の葉などの自然物で仕上げていた)

ペーパ仕上げが嫌いな理由はいろいろあるのだが、だいいちに人工の砂で擦るなどすると、樹が痛がるような気がするのだ。

生きている樹は、日本刀のように研ぎ澄まされた鉋刃で一刀両断にしないと不憫だし、仕上げても味わい深い生命感のある肌が得られない。


僕にとって日本の仕上げ鉋は、サンドペーパーに換えられない大切な手工具で、弟子達には製作法を念入りに教える。

西洋の鉋や中国の鉋から余計を取り去ったシンプルな日本の鉋は、他に置き換える物がなくて工房の仕事はこれをマスターすることが不可欠となっている


弟子達_飛世将利君弟子達_早川久美子君 - 4.jpg

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豆平鉋.jpg
「豆平鉋」
1992年 長さ2寸5分

1990年頃から僕はハイス(HI SPEED STEEL)鋼の刃を使う鉋に、今までの鉋を作り換えています。

この合金は機械用の鋼として一般化しているものですが、従前の鋼より刃持ちが良く、長切れしするので堅木細工に向き、とくに漆や金箔を施した部分を削る場合に欠かせません。

また、栃や楓や一位の樹などは、金属質や石灰質のようなものを土中から吸い上げ、それが木肌に現れることがあって、これを削るのに従来の鋼では難儀するのです。


使い始めた頃は柔らかい木には使えないと思っていましたが、桐や杉や桧などの針葉樹でも充分満足のいく切れ味です。

鑿もハイス製のものは薄造りで、厨子などの細い溝を細工するのに向いていて重宝します。


指物では長さ7センチ以下のごく小さな鉋を豆鉋と呼びますが、弟子入りして最初に作り方を教わるのは、この鉋です。

豆平鉋は伝統の中で培われた、指物師になくてはならない鉋で、合わせ刃を53°の切削角で台に仕込んであります。

これにより逆目を止めるために裏刃が必要なく、さまざまな鉋のなかでも。堅木用の一枚刃鉋と区別しています。

写真以外にもさまざまな小鉋を使いますが、基本は豆平鉋の原理を応用しています。


指南帳_鉋_小鉋_豆鉋一覧.jpg

「豆鉋」

鉋の台は白樫または赤樫で、後者は美しいが割れやすく、普通は白樫を使って制作する。

鉋刃は、昔は煙草包丁の研ぎ減ったものの払い下げを必要な寸法に切って作った。

一般的な寸六、寸八のような鉋にはハイス鋼が使われ出しているが、小さな鉋刃は作られていないので特注して作ってもらうことにしている。

また、鉋台を彫るための薄鑿や、溝を作るための特殊な刃物は既製の鋼を加工して使う。

弟子達に工程を記録させ、以下に制作方法をまとめてみた。

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制作行程、刃物注文先.pdf



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