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前田純一 blog

2011.10.18

本山合せ砥の仕立て直し(2)_砥石の固定

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伸縮する木としない石の特質と、水の進入、乾燥に留意し、台と砥石を麦漆(むぎうるし・小麦粉と漆を練って作る接着剤)で固定します


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父に「あんこの硬さだ」と怒られましたが、耳たぶぐらいのかたさになるよう小麦粉を水で練り、写真の色ぐらいになるよう、漆を混ぜて練ります。一気に混ぜず、希硫酸を作るときのように、ホワイトソースを作るときのように・笑・ヘラで切るようにしては少しずつ練るのがコツです

1 砥石の底部三カ所をサンドペーパーで荒らしておき、適量の麦漆で点接着します
2 砥面が地層と平行になるよう高さを水平に合わせるのは重要です
3 砥石と台とはぴったり合わせず漆の緩衝材が入る2、3ミリの隙間をつくって位置決めします
4 ムロにいれ二、三日間乾燥します
5 乾燥後、水が入らぬように木の粉と麦漆を混ぜ松煙で着色して隙間をシールして室に入れます

【注1】木が伸縮して砥石とはがれないように麦漆は全面に塗らず三カ所にします
【注2】砥石と台の間に入った水を逃がすように台に穴をあけておくのが一般的です
【備考】漆の乾燥は温度20°上(以上)、湿度50%上といわれています
もっとも乾きが早いのは水分が多い生漆(きうるし)で、小麦粉、砥の粉、木粉、米糊などを混ぜるほど乾燥が遅くなります。
漆の種類別では、木地呂漆、呂色漆、や弁ガラや朱のような顔料を混ぜて朱漆を造る朱合漆など水分を抜いたりクロメたりして加工された漆ほど乾燥が遅く、2、3日から4、5日かかることがありますので湿気で伸びやすいうす造りの指物はこわれないように注意しなければなりません。酒井邦芳さんによれば顔料をまぜた色漆は一週間ほどかけてゆっくり乾燥させると発色がよいそうです




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2011.10.15

本山合せ砥の仕立て直し(1)_布着せ

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toisi01.jpg父は東京美術学校時代の彫刻の恩師、関野聖雲からこの砥石を譲り受け、関野先生はその恩師高村光雲から譲り受けたものではないかと昨年芸大彫刻課の藤曲隆哉先生がみえたおりに楽しく想像したのですが、高村光雲は光太郎から愛用の道具類を譲り受けているので、僕の預かるこの砥石は歴史を刻み込んだ由緒深い本山合せ砥で、欠けのないピン角の銘品です。

天然砥石は地層から水が入り傷むので、砥面以外に粗相のないよう麻布を着せ、その上から漆で養生するのが古来からのお作法で、小生が使い始めてから40年、父が使い始めたときには独特の形をした檜の台にすでに嵌め込まれていたので今回が恐らく80年以上を経た末の手入れとなるだろうと思われるのは、その台の形から愛用している人間が特定できることと、この砥石が(おそらく)浅草にある、といしや、で売られていた当時、すでに布着せがしてあっただろうと思われる正真正銘のあかしとなる丸い覗き穴が麻布に開けられてあるからなのですが、関野聖雲に関する研究と先生の使われてきた鑿、小刀、彫刻刀の資料をまとめている藤曲先生が工房のホームページの道具の写真をみてそうではないかと想像した末の工房来訪でしたので、砥石に限らず鉋、鋸、小刀などなど、作者の技量や道具への愛着と、それらが生み出すものとの関係をあらためて実感することになりました

 漆と麻布が砥石からはがれはじめたのは昨夏ごろで、心配な冬を迎え、この砥石もいずれは息子が使うことになるので、木部は自前、砥石養生は塩尻で漆の仕事をされている酒井邦芳さんにお願いし、僕の誕生日から3月までの間、手間暇惜しまずの仕事となりました
 今年は息子との親子展の計画があり、現代は簡単に済ますことが出来る素材と技法があり、僕は展覧会に向けて膨大なスケッチをかかえているのですが、やはりぼくたちは自分の仕事に誇りを伴わない安易な技法と未来の地球に悪いかもしれない合成素材を使いたくないものなのです

 


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「小端小口の漆布着せ」

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布着せ(麻布を漆で接着後、漆を塗り重ねて仕上げる伝統技法)が完了した本山

使う麻布は古い蚊帳を使います

漆の色は自由で、麻布の布目をみせる方もいますが、漆黒艶消しの布着せにしました
 漆は本来茶色ですが、この黒漆は陽にあてて水分をぬいたくろめ漆に鉄粉と松煙を混ぜてつくります
漆の中に含まれるタンニンと鉄が黒く反応した黒漆は、工房の鉄と絹との反応を利用する鉄の綿色着色と同じ自然の原理、この漆に混ぜる松煙は松を燃やして出来るカーボンのことで一千年以上退色しない歴史があります
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「木曽檜材台部の彫込み」

砥面の大きさは長さ七寸五分、巾二寸五分が伝統で寸八と寸六と呼ぶ鉋刃を研ぐのに適します
 厚みは現在55ミリ、入手時はおそらく二寸強と思われますが、よい砥石ほど瞬時に刃を合わせるので100年を越えてすり減った厚みは僅か5、6ミリです


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「さびうるし」

水がしみ込み傷みやすい台部木口をさびうるしをしみ込ませて養生します
写真は三月で退房した早川さんに手番をしてもらった時のスナップです


砥部などの地名に残る日本各地で古代から採掘されてきた砥石の中で、本山(ほんやま)は平安時代頃からもっとも品質がよいとされてきた京都梅ヶ畑産出の意、荒砥、中砥、仕上砥と区別される砥石のなかでも、このように美しく鋼と石が擦れたときに発する匂いに格調があり、刃物に吸い付いて仕上がりの素早い砥 石を使う研ぎを我々は合わせると呼ぶのでとくに合せ砥と呼ぶのですが、金属と石と工人の心が一致するところが起源かと思います

研ぐという行為は想像に満ちて楽しく、美しい砥石はこれからの仕事の良否に関わることなのですが、僕の場合過酷な制作の現場では堅牢を第一に計画します
 自然に還るさびうるしは生うるしと砥の粉を練ったもので乾燥すると石のように堅牢、常時水を使う研ぎですが、殺菌力を持つ漆と木曽檜との組み合わせで今後少なくとも100年は腐らないとの心づもりになりました



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「研ぎ場にて」
九月頃からようやく手に馴染む

この砥石が掘り出された経緯、巡った先輩に恥じない仕事と気持が新たになります


2011.01.07

松本市都市景観賞_路地にある家_宮坂直志君、松並木 三城から御射山へ

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直井邸
 
建築家宮坂直志君の初作品、卯の会メンバーと協力してつくった「路地にある家」が松本市の平成22年度最優秀景観賞を受賞した。
市の中心部、込み入った暗い路地の一画に空が大きく開けた空間をつくり、変形敷地に合わせて設計した平屋の簡素でピュアな現代建築と、当たり前すぎて忘れかかっていた湧水を利用して信州の雑木や山野草を植え込んだ前庭、それらが塀で囲い閉鎖的になりがちだった古い路地裏の今後の方向性を示唆したことが審査会全員の支持をうけたのである。
クルマがはいれない不便や当初頭をかかえていた排水の難問が、かれらの創造力によって現代に得がたい静寂と町内の安全や、よごしてはならない貴重な湧水の存在を気づかせてくれていて共感する

僕が末席を汚している松本市の都市景観審査会は一般の建築賞とは審査基準が異なり建築物個体を審査するのではなく、作られたかたちから建築家や住まい手のこころを周辺のたたずまいを含めて云々する審査会なので受賞したからといってすぐに宣伝や経済に結びつくわけではない。根回しや心付けなどとは無縁なので、なおさら直志君の正しい美意識に裏付けられたデビュー作が光っているのである。
松本という街が引き継いできた伝統、それらと遊離することのない未来の建物、道路、公園、植栽、看板、広告、そしてこれらに留まることなく地域活動をも含めてこれからの街作りを考えることは、とりもなおさずそのベースとなる住民の、ひいては我々自身のこころの美を問うことになり、このことは街並みを形成する専門家だけにとどまらず個人の人間性を大いに高めてくれることになるだろう

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おめでとう!!!

設計にあたり水を念頭に置いたのは自然と戯れているからでしょうか? 今年結婚の報告をいただいた直志君は、画家だった父君を亡くされた中学生のころから三城の自然のなかで薪作りをしたり、路地にある家周辺の湧水の源流となる大門沢でいわなの稚魚をすくって工房の庭の泉に放したり、焚き火の匂いを嗅ぎながら遊んでいました。
彼の作品とフィアンセのご実家の建築が応募していることを知って審査の三週間ハラハラドキドキ。最終審査で両方が残り、地域に今後の方向を示す創造性がすぐれていることから路地にある家が最優秀賞、新しい機能を加えながら松本伝統の蔵を見事に復活させたことで上島歯科医院の蔵が、建築物・工作物部門賞になりました。審査後の交流会で僕との関係を明かしたときにはよく黙っていたと一同爆笑だったのです。

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「公共施設部門賞」

市道3504号線改良工事(薄川左岸金華橋下流)



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僕にとってうれしい三つめの偶然といえましょうか? 貴重な遺産を保全した道路改良工事が評価され、三城への登り口にあたる薄川(すすきがわ・美ヶ原に源を発し、松本市を潤しながら、千曲川、信濃川へと続いています)河畔、金華橋の松並木周辺が公共施設部門賞に選ばれました。(道路標識のセンスや無神経さが悪評でしたが、歴史的に意義深い仕事と評価されました・公共工事に最高賞は与えられない決まりになっています)

さて、僕達の住まう三城は歴史の浅い戦後の開拓地と思われているのですが、実は平安時代からこの松並木の下を貴重な労働力だった牛馬を曳いて三城牧場へ登り、それらに休養を与える放牧が盛んに行われていて、三城の地名は後世松本城に敵の来襲を知らせるための、のろし台(城)が三つ作られたことが由来となっています。

この松並木から三城と天の岩戸伝説の扉峠を経由し、ヴィーナスラインをMINIで走って一時間(本当は死んでしまったサラブレッドの愛馬、排気ガスなどださないルークに乗ってギャロップしたかったのですが)、太陽、月、星を祀ったといわれる御射山神社(みさやまじんじゃ・諏訪の御柱祭で有名な諏訪大社の上社にあたります)の湿原では、鎌倉時代から流鏑馬競技が盛んに開催されるようになり、各地から三万人が集まる大祭となって明治維新前まで続いていたのです。

それにしても、なぜ冬の間行き来の出来なくなる1500メートルの高原へわざわざ登ってまでこのような祭りが盛んになったのでしょうか? 伊勢神宮のある紀伊半島のように、かしこい昔の人は時代が変わっても開発されることのない不便な処を環境が破壊されない神の住む神聖な場所として選んだのではないか、そして御柱の樹はこの上社周辺で倒されておろされたのがルーツではなかったのかとひそかに僕は想像しているのですが、20年過ごしてきた鎌倉を出て、キラキラと首に汗が光る駿馬の背中にまたがり、中山道の山道を御射山へ向かう鶴ヶ丘八幡宮で流鏑馬を修めた若武者や、篤姫のようなお姫様のおかご行列に思いを馳せて楽しく、伐採する考えをしりぞけ見事に保全された松の木のそばでほっとしているのです




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薄川・ヴィーナスライン印象

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「雪桜」薄川河畔にて
2010年春・松並木に続く桜並木から塩尻方面を望む


susuki.jpg「万葉歌碑」
歴史を語る石碑が松の木の根本に建てられました



susuki00.jpg「正月行事・三九郎」
薄川では各町会がしめ縄やだるまを炊きあげて無病息災を祈ります

misayama.jpg「フューチャーとステラ・御射山にて」

つわものどもが夢の跡・・

美ヶ原高原には温泉がなく冬の始まりからから早春まで人がふみこむことがありません。立ち入り禁止になっている1万2千年かけて出来上がった天然記念物の湿原に絶滅危惧種となった高山植物がいのちをつないでいて短い夏を惜しむように咲き乱れます

wasigamine.jpg「鷲が峰頂上から」
流鏑馬競技場になっていた八島が原湿原を望む
周囲には見物席の桟敷がいまも残っています


ヴィーナス.jpg「MINIとバンビ」

運がいいと美しい子鹿やりすに出会うことができます
ヴィーナスライン・御射山への道・三峯付近



rook.jpg「ルークとジェミニ」
三城へ移住した頃

地球の循環の一員となって一生をすごすことなど、大動物からはさまざまな大切なことを学びました


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>>松本市公式HP_審査講評



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>>路地にある家竣工時 (2010年6月

明るい新年のよい結婚祝いとなりました。若い二人から素敵な家庭がうまれることを祈っています。路地に戻ったトンボや蛍と子供たちが戯れてくれたら夢のような町になりますね


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日本の伝統を引き継ぎながら未来に繋がる若々しい感性を生かして活動している卯(うさぎ)の会は 宮坂直志君をはじめ、庭師の花岡博文君、宮下剛一君、左官の白澤雄介君、息子大作たちなどなど、松本の若手職人で構成しています



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うさぎのようにとくに今年は大いに跳ねよう・・ゆかいゆかい・・>>卯の会ブログ


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「新春の泉で」


2011.01.06

Happy New Year_

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あけましておめでとうございます
本年もどうぞよろしくお願いします


日頃からあたたかいご理解を賜りましてまことにありがとう存じます
三城に移住して半世紀、そのころ小学三年生だった卯年の息子、四代目大作に子供が授かり、脚のふみ入れようのない荒野にようやくひとすじの道のりができたような感覚に昨年はめぐまれました
僕達の仕事は生活と遊離することのない美しいハンドメイドです。機械には生み出すことのできない「原点・工芸」を、工房一同今年も力を合わせて研究します


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展覧会開催のご案内 ・ 「前田純一 大作木工展」

会場・銀座和光本館6階 和光ホール
会期・ 2011年11月1日(火)〜7日(月)

父保三と叶わなかった親子展に向けて準備中です
和光本館での個展は四回目、一生懸命つとめさせて頂きます

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「Footprint・2011元旦」

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みなとみらいのクリスマス・2010.12.25

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xmas02.jpg「薪ストーブ」
2010年師走早朝
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xmas01.jpg「工房の女性陣」
息子誕生日

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四季三城
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2010.12.17

指物師の道具箱_小鉋_際鉋立刃五分(定木付)

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HSS(ハイス鋼)の刃、仕込み角53度、刃巾五分(15mm)、左右一対、細かい細工用の長さ75ミリの際鉋です。


ごく小さな木欠きや段欠き細工時には、位置を調節出来る定木をとりつけて巾を決めます
定木の調節用の3ミリのネジ穴は、下穴を2.4ミリであけ、木にタップを立てます。
その後アロンアルファでねじ山を補強し、ビスにろうまたは石鹸を塗るとスムースに締まります

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v1002.jpg「ヴィーナスライン秋色」10月2日


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