
「厨子金物・斑鳩の厨子2009年」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「井尾建二氏」
銀座和光_時代をつなぐなかまたち展2009年2月慰労会で
厨子金物の製作をお願いしている三歳年上の井尾建二さんは、日本工芸会金工部会の重鎮。僕が木竹部会に籍を置いていたころからのご縁で鍛金の井尾敏雄氏は彼の父君になる
鍛金、彫金、象嵌など金属工芸分野のあらゆる技法にたける天才だが、仕事に入る前は電通に身をおいていて、僕は家具のインダストリアルデザインに携わっていたことで共通している
東京青山で長く彫金教室を主宰し後輩育成に努めていて、優れた職人が途絶えた現在、僕の期待にこたえてくれる彼のような錺金物師は日本全国で見あたらない
内心仕上がりを心配していたのは、厨子斑鳩は今までの同型のなかで最も小さく高さ25cm、錺金物(機能を伴う装飾性のある金物)も数ミリの精緻な設計だったからだか、依頼後二ヶ月届いた作品は繊細で美しく予想通りの見事な輝きを見せていた
インド中国をルーツとする宝珠(ほうじゅ)、宝相華(ほうそうげ)、唐草(からくさ)、木瓜(もっこう)などの意匠は伊勢神宮の式年遷宮のシステムが関わり、その時代にすでに日本の美しい形の普遍性が確立して現代に継承されている史実は我が国の長い歴史を物語っているが、西洋でも自然界の曲線は神のものと比喩されて定木コンパスでは描くことが出来ないベジェ曲線といわれる国境のない美の構成要素である
余分を捨てて単純になるほどに美しさがエッセンスとなって取り出されたという結果に江戸指物があり、僕の形はそういった伝統をデフォルメして錺りとする装飾なのだが、往々仕事の出来る職人は頑固で依頼者のいうことは聞きいれない
非常に手の込んだ作品を得意とする井尾さんを僕が尊敬するのはその頑固さがないことで、僕の思い描くものを見事に実現して気が効き親切なばかりでなく、はなはだむりな期待にいつも応えてくれているのだが、これは日本の伝統のかたちと技法を父親の姿を見ながら身にまとい、さまざまな発想をうけいれることの出来る自由人だという証しである
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
左上・錺蝶番_銀製、線彫、地荒し仕上・巾3cm
右下・定木錺金具_銀製、線彫、地荒し仕上・巾4.5ミリ


「内掛錺金物」2007年工房で