home > blog > 前田純一 blog > works

works

2009.04.28

ミュージックキャビネット_工房の家具インテリア

(0)  (0)

JBL_LE8T_三城居間.jpg
「居間のミュージックキャビネット」
〜2009年最後の雪景色〜

三城へ住むようになってからクラシックを多く聞くようになったのはなぜだろうと思った時がある。ダイナミックレンジの広い交響曲のピアニシモは街の騒音にかき消されてしまうからなのだろうと思ったのだが、それらの曲の生まれた状況が自然豊かな環境だった必然性かとその後考え直してみたりした。
木枯らしに舞う雪や、春先の鳥たちの嬉しさに満ちたようなさえずり、草の匂いにむせかえる夏の夕方の澄み切った空気、或いは秋の輝く樹々の気配などからの感動がグローバルに当時の人の世界と一致しているのかもしれない

音楽が大好きなのだが僕の場合はステレオに対峙する聴き方ではなく、どちらかというとピアノ曲の小品、この時期ならば、ドビッシー「夢」、「月の光」などフワフワとした感じのやさしい音楽のボリュームを絞って、あるいはベートーベンの田園二楽章、たまにはサティなどをなんとはなしに聴きながら、窓外に季節の移ろいを感じながら作品のスケッチを思い描いている

工房には自作のスピーカーが三組あって、いずれも天井から吊すか壁掛け式、スピーカーボックス左右を一体構造にして低音のふくよかさをねらい、ユニットを横向きにセットしてユニークな木の反射板に音波をぶつけることにより、聴き疲れやすい高周波を吸収しながらスピーカ一の位置を意識しない音場空間をつくっている
音というものに形はないのだから、それであればホテルなどの天井埋め込みスピーカーでよいではないかとなるのだが、それでは僕はおもしろくなくて美しい物体が空間に存在しているところに職業感がある

引っ越してしまってからようやく完成した居間にしつらえた天井吊りスピーカーには笑い話があり、作ってしまったのはよいが仕事場のドアーは小さすぎたし、人力では梁まで持ち上げることが出来ない。それで当時乗っていた4WDのウインチで吹き抜けの天井に滑車を取り付けてセットするはめになった

スピーカーユニットはJBLのフルレンジ_LE8Tに、減衰量18デシベルで7000ヘルツ以下を抑えたスーパーツイータのシンプルツーウェイ、このユニットは大仰なマルチスピーカーシステムやマルチアンプなどの試みからよりすぐった生き残りで鎌倉時代からのお気に入り。高価だったがすでに30年以上飽きずに聴かせてもらっていて、僕はこういうものを一生を共にする本物と思って出会いを感謝している





ミュージックキャビネット_0904_01.jpg
「工房のミュージックキャビネット」

工房建築中に作ったもので作品の原型になっている
当時は野外に持ち運べるよう反射板を折りたたみ構造にしたボックスを、車輪を取り付けたフレーム上部にセットし、機器類はソニー製カーステレオ、電源はカーバッテリーでエネルギー供給は当時出始めていた太陽光発電パネルで持ち運びコードレス。気持ちのよい昼下がりには庭の芝生で「春はじめてカッコウがないて」などを楽しんでいた。しかし消費電流に対して電力供給が間に合わず失敗、なくなく電源コードをつなげるはめになった。

カーステレオ用のスピーカーユニットはアルミハニカム振動板などが使われていて温度差などの過酷状況で壊れることがなかった。現代はパソコンからでも魔法のように音が出るが、20年を経て現在は壁に掛けられ当時と変わりなく楽しませてくれていて、とくに愛でたりはしないのだが僕にとっては苦楽を共にしたツールとなっている。当時のカセットテーブから時代はIpodといったデジタルになったが、スピーカーがアナログでありつづけていて興味深い

スピーカーボックスの中身はがらんどうなのだが、僕にとってはかけがえのない音楽という空気が詰まっているので ミュージックのキャビネットとネーミングしたのだが、これらの試みはそののち展覧会出品作品になる

スケッチ_ミュージックキャビネット.jpg
ミュジーックキャビネット_三代目のスケッチ


2009.03.16

ch_トキシラズ_

(1)  (0)


ch_トキシラズ_ri02.jpg
「ch_トキシラズ」 





090316トキシラズ02.jpg
「正月七草、工房での打ち合わせ」







0903栃材の娘の椅子01.jpg
「三角の栃材縮杢の座板の娘の椅子」1987年

トキシラズ店内 5メートルのカウンター席用の椅子は、1987年に制作した「娘のための椅子」の背部構造をモチーフに、床に接する部分を動きやすい線接触にしたフレーム、座面高43cm、不特定の方が座ることで、前縁を前下がりのベジェ曲線にした有機的な座面により2時間まではクッションなしで座り心地のよいことを目的に制作中です
日本の伝統的な感性を生かして錆鉄綿色を美しく表現したフレームと、人の手が生み出す手鉋仕上げの無垢の座板と背の鉋目の仕上げによって心地よい自然の感触を特徴としています

この背のような木部は、一般的に曲げ木と呼ばれる木を蒸して曲げる手法か、成形合板と呼ばれる、薄い板を曲面状に貼り合わせる手法で作られますが、600アールに曲げた鉄フレームの背部分に4ミリのステンレス素材のボタンキャップビスで固定することで独特なディテールとし、目切れ(木目が切れることで折れやすくなること)を補強しています


0903栃材の娘の椅子03.jpg

090316読み聞かせ01.jpg
「読み聞かせのベンチ背部・2006年」


僕は曲げ木が出来ませんし、樹を工業素材にする立場と対極に身を置いていて、樹の長所と欠点をよく知ることと自分の培った技法を生かすことが必然のデザインとなって独自の作品の創造に繋がっているのですが、人は自然の上に生かされているべきで、なにより樹に過剰な人為を加えたくないと思っているのです






2009.02.12

扇のパーソナルチェアー_「時代をつなぐなかまたち展」2009年2月19日から・銀座和光並木ホール出品作品から_

(0)  (0)

090212_02.jpg

座るのに椅子が必要になったのは戦後生活が洋風化したからである
椅子には家族が勉強したり食事をしたり仕事をするためのものと、個人のものとがあり、自分用の片アームのパーソナルチェアーを1986年に作って気に入っている

23年の間、僕はこの椅子に座って日の出と夕日に感動し、燃える樹の故郷を思いながらご飯を炊き、樹が灰になる過程を楽しみ、悩み考え、たまに喜んだり夢を見たりしてきた
8寸(24cm)の存外の座面低さはそのころ小さかった子供達と僕との視点を合わせるためであったが、床に座る方を見下ろさない
一見固い木の椅子にこだわるのは、化石資源から出来たふかふかのクッションよりも、夏であれば、いと涼しげな麻を被せた日本の座布団などをのせて楽しみたいからである



090212_01.jpg
何十年も使える堅牢な椅子、親が座ったものをその子供がまた座る事が可能な椅子、流行でもなく、多少荒っぽく使って傷がつこうが、個性的でびくともしない美しい椅子などを作っていては儲からないので世の中にはへんな椅子が溢れているのだ
しかし樹を粗末にして作った規格の椅子に自分を合わせたり、使い捨てを買い換える事を楽しみにしてしまうと、自分の人生までが型にはまった使い捨てになりかねない

この椅子には火の番にはじまり、生きていくためのさまざまな仕事が与えらているのだが、僕はぼちぼち息子に譲ってもうすこし座を高く大きくした新作に座ろうかと思っている





2009.02.10

五膳箸箱_「時代をつなぐなかまたち展」2009年2月19日から・銀座和光並木ホール出品作品から_

(0)  (0)

箸箱_五膳箸箱_09021001.jpg


2007年暮れ、家族用に箸を拵えた

白木と色漆塗りを組み合わせ、家族一年箸と名付けたが、色は日本の色名、発想は覚園寺の五正色幕である
一年間、家族でお揃いを楽しみ、暮れに土に還して新年新調するといった考え方は伊勢神宮の伝統風習に習った。もっとも2年目に入った箸は使い込まれて味わい深く、僕のお古を使わせて弟子の仕事の上達を祈っている

おかげさまにて箸が好評なので、今年正月には五膳揃いを入れる箸箱を作って気に入っているが、いくつか手直しし、この展覧会に出品することにした



箸箱_五膳箸箱_09021002.jpg


制作動機は防かび剤汚染された木材と化学塗料だったが、それを使わぬ国産材で拵えたこの箸は、よく乾くよう気を配らねばならない
それで側板下部に風窓をしつらえ、底板は三分割して内部を通る風と、自然の樹の香りがこの箱のデザインポイントになっている
秋田杉柾目と蓋には落葉松を使い、側板を一枚の板から木目を通して木取るのは、工房指物の譲れない作法である。
蓋木口に生漆をヘラ付けし、装飾となる割れ止めとしたので、華奢だが一生道具となるかもしれない


箸箱_五膳箸箱_09021003.jpg
我が家にはさまざまな生まれの若者が同じ仕事をめざして集まるが、絆の定義を一言で唱えるのは難しい
しかし夕餉時それぞれが役割を分担し、炭火を囲む質素で安全で美味しい食事は愉しみで、美しい道具類が場の雰囲気を毎日盛り上げてくれているのだが、このことは家族としての一体感を大いに高めてくれている

箸箱_五膳箸箱_09021004.jpg



2009.02.03

T チェアー(桐と桑の手前椅子)_「時代をつなぐなかまたち展」2009年2月19日から・銀座和光並木ホール出品作品から_

(0)  (0)

090205sk_t.jpg


西洋を取り入れて戦後普及した日本の椅子は、畳や木の床での暮らしの習慣、体格の違い、靴を履いて使う外部空間と裸足で歩く清潔好きな家庭空間の違いなどの問題が未解決で、さまざまな試みがされていますが、きものを着て座る日本人を思い描きデザインしたこの椅子は、茶道のお点前を参考に手前椅子と名付けました。
1995年の銀座和光での個展に初出品以来、西洋では使われることの少ない針葉樹のかろやかさを生かして、杉、落葉松(カラ松)、松などと手縫いの革を組み合わせてその後さまざまなデザインが派生し、日本の研ぎ澄まされた手鉋仕上げの味わいと、うずくり仕上げによる生命感溢れた素材の触感を特徴としています

鍛造の錆鉄のフレームは茶道で使われる茶釜の仕上げに習い、背端部に溶かした真鍮を被せた鉄輪をデザインポイントとして、ウレタンなど、健康被害を起こしている化学塗料を使わずに仕上げた樹と共に、地球にリサイクルする日本古来の考えは工房作品全体の共通の思想です

 また懐石に昇華された雑煮、白米、漬け物、焼魚など日本の食事を、向付けや小皿などに代表される日本の食器が口に近づく形態と、大きな洋皿に口を近づけて頂く形態の違いからくる差尺(椅子座面高さとテーブル高さの寸法差)を考慮しながら、茶室で小さな宇宙を作りだしてきた日本に見合ったサイズにし、最近問題視されている椅子使用による腰痛の増加などをふまえ、僕達が大切にしてきた背筋をのばした健康的で美しい所作を大切にしています

差尺_090205.jpg

「差尺の検討_和食器・洋食器による所作」


特に重要な座板面は座骨中心点位置とベジェ曲線にならった大腿裏側に接する部分を計算してカラダに沿った美しい曲面を手鉋で削りだすことによって、木の椅子のすべりやすい固い感じをなくし、椅子の語源、人が木に寄りそう意味を大事にしています

これからの日本の椅子は、寸法や色やかたちだけではなく、樹木への敬意のこもった制作姿勢や、木材を消費してしまった結果の環境破壊への反省、或いは民族が培ってきた針葉樹の文化、日本の刃物の切れ味が醸し出す味わいを生かし、長い歴史と文化にそぐなう未来の格調を生み出しながら、西洋の合理性と融合して発展して行かなくてはならないと思います


works_ch_手前椅子.jpg
ch_桐と桑の手前椅子.jpg
「落葉松の手前椅子」2004年制作


作品は、工房の日々の暮らしから生まれる道具が出発点ですが、昨秋家族となった嫁の希望を聞き、以前から作りたかった桑と、暖かな桐材を組み合わせた座板で設計し直した、新デザインを出品に向けて制作中です。
美しい日本の椅子の試みは、美しい日本女性とは、に繋がり、二人の娘に既製の人生ではつまらないよ、人生は一回きりのオーダーメイド、オンリーワンの日本女性に成長して欲しいとの僕の祈りと重なり、点前と嫁の頭文字からT チェアーと名付けようと思います








«  前へ   2  |  3  |  4  |  5  |  6  |  7  |  8  |  9  |  10  |  11  |  12   


PAGE TOP