10月29日から銀座和光本館ホールにて開催予定の前田純一・大作木工展。
現在、全力で出品する作品の制作に取組んでいます。
大作は、厨箪笥の制作が大詰めにさしかかっています。

栗材をつかった、この作品は
下段は引出し、上段は引違戸となる食器用の箪笥です。
美しい木目の栗材を、その素性の良さを引出せる様に
注意をはらいながら配しています。

引出しの構造は自然に還る素材への強い想いから木のレールを仕込みました。
スライドレールのようにスムースではないかもしれませんが
簡便であることよりも、長い意味で使い続けられる事に
本当の価値を見いだしたいと思っています。
高気密になった近年の日本の住宅事情を考えると
仕切り板によって引出しをささ得る伝統的な構造も
時には見直さなくてはならないとも思います。

面腰の框を組んだ、引違戸の枠。
栗材の美しい鏡板を、しっかりと支えて引き立てる大切な仕事。

指物というと、木だけで作ると思われていますが
良く考えてみると、美しい金物は非常に重要な指物の要素。
木材をホゾ組などによって構築して物を成立させる指物は
長所を活かし合い、短所を補い合うという必然性を大切に考えています。
異素材もまた然りで、伝統的な日本の家具には美しい金物が不可欠。
今回の厨箪笥の引手には鍛造アルミニュームを選びました。
銀鑞による彩りを施した銅や真鍮にも強く惹かれますが
アルミニュームの高いリサイクル性には
新しい金属でありながら強い魅力を感じます。
また、長年アルミニュームによる作品作りにも腐心してきて
最近ではようやく、アルミならではの美しさを引出す糸口も掴めた様な気がして
今回の美しい栗の杢をひきたたせる大役を、この素材に託してみようと決心しました。

長い時間をかけて育った栗。
偶然が重なって手元に届き、美しい板にするために
日々悩み、手を動かしてきました。
まもなくこの作品も制作が終わり
秋のお披露目に備える事となります。